茶の湯を愉しむ暮らし 千葉県T様邸

 夫婦それぞれが充実したセカンドライフを送れるようにと、T様が奥様かねての念願だった茶室を依頼。かつてT様の書斎に使われていたスペースは、京間の茶室に生まれ変わりました。京畳を使った8畳の広間には炉がきられ、隣には水屋も設けた本格的な造り。天井や鴨居などの室内は杉のムク材が中心に使われ、「もう数十年すると杉の赤味がいい具合に深まって趣が増すそうです。今から待ち遠しくて」と奥様。「仕上がりを想像しながら、材質や色についてあれこれデザイナーの方たちと相談していた時間は夢のようにたのしかった」と振り返ります。

 以前はお庭に立礼席を設けてお茶をたてたこともありましたが、「屋外はカジュアル。お茶室のお点前は全く雰囲気が違いますね」。無駄をそぎおとした静謐な空間、床の間に飾りつけた行事にちなんだ掛物と季節の花、茶せんを振る軽やかな音、お茶をたてる側ともてなしを受ける側に流れる濃密な空気。「そんな心地よい緊張感が共有できるのがうれしい。和の空間の威力…とでもいうのでしょうか」。

 「お花屋さんの前を通ればこのお花にはどんな花入が合うかしら、焼き物をみればこんなお茶碗もそろえたいわねなんて、お茶室が出来てからほかのことに目が行かなくなってしまいました」と話す奥様。「そのうち気の置けない友達とお茶の会をもちたいですね。ここは一会をたのしむ部屋。私の交流を広げる場でもあるんです」

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    茶事の準備をする水屋。竹のすのこを敷いた流し、棚の隣に物入れを配した正式な造り。
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    門扉を経てアプローチからそのまま茶室へ入れる造り。貴人口からお客様を迎えます。
アーキテクト 島田信一
STAFF MESSAGE

奥様が望まれたのは本格的な京間茶室。表千家の茶室の構造を取り入れ、造作は赤味の杉材を基本に、柱は杉の面皮柱とし、床框にみがき丸太を使うなど細部にもこだわりながらプランをつめました。お客様をもてなす広間の茶室は天井高を上げてエアコンを隠し、スイッチ・コンセントを一切設けずに、限られた空間に最大限の広さと簡潔さを出しました。また、台所ともいえる水屋では棚板奥の障子の裏に照明を入れ、茶の湯の道具類をしまう収納スペースを多めに設置するなど作業性を重視しました。